ふたりぼっちの夜

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 髪を撫でていた手が頬を包む。 「俺がいるから」  俺はグッと目を瞑り、課長の唇に自分のを押し付けた。なんでこんなことするのか自分でもわからない。でも、どうでもよかった。自分の未来も、相手の事も、どうなるかもどうでもいい。  ただのヤケクソだったのに、課長は力んで固くなってる俺の唇をそっと包み込んでくれた。優しく吸い、撫でてくれる。それはすごく巧みなキスで、固く結んでいた唇の力が抜けて解れた。  全身をまさぐる手。  いつの間にか俺も課長も裸になってた。課長の顔が俺の体の上を転々と滑っていく。どんどん下へ降りて、有り得ないところをすっぽり包まれた。あったかい。それはそこだけじゃなくて、体中があたたかかった。吐き出した己の息も熱い。どんどん高められる。  気持ちいい。その感覚のままに吐き出し、俺はビクビクと腰を震わせていた。僅かに乱れた呼吸を落ち着かせてると、何かが体の奥へ入ってきた。眉が寄る。何かわからないけど入ってる。グチャグチャにかき回されてる。気持ち悪い違和感に顔を歪めた。下半身にククッと力が入る。泣きそうな気分だ。でも、さっきまでのとは違う。吐き出す方じゃなく心が縮んでいくような感覚。 「はあ」  息を吐いた途端、意味不明な声が飛び出した。それを一度許したら止まらなくなった。気持ち悪いだけだった感触が気持ちいいに代わってる。俺は奇妙な音と言葉を垂れ流し続けた。  課長がまた覆いかぶさってきたと思ったら、ものすごい圧迫が身体へ押し寄せてきた。  ゆっくり侵略されていく。  ありえないのに俺の中に課長のが入ってる。怖さに目を開けると、課長はあの優しい目でずっと俺を見おろしていた。  軽く歯を食いしばり、俺の中を緩急をつけて満たしていく。
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