ふたりぼっちの夜

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 これ以上無理だってくらい全部を満たすと、課長の唇が俺の唇を塞いだ。無抵抗だった。自分の意思じゃないと思うのに、俺は抵抗しない。どうでもいいとは思ったけど、こんなのしたいわけじゃなかったと思う。でも……。  口内を舐められると苦しいだけだった感覚の奥で別の何かが生まれる。  ポタッと降ってくる汗。  俺の投げ出してた手に重ねられる手。  絡まる指に俺も絡め返した。  お腹の中で膨れ上がる。  俺は「はぁ」と息を吐いた。ホッとしたような感覚はあったかい玉になって目の脇から零れていった。 「一緒にいるから」  解ける指。  課長は俺を強く抱きしめると、ラストスパートを掛ける。  俺はバカみたいに大きく鳴き声を上げながら課長にしがみついた。
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