まおうのたね

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「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」  その叫び声は空から、涙と共に降り注ぎました。野原に遊びに来ていた王女が飛竜にさらわれてしまったのです。 「お兄ちゃん、助けて! お兄ちゃん!」  けれど、兄には何も出来ませんでした。御花摘みに来ていたその王族には勿論ですが、護衛の騎士たちにも竜は強すぎる魔物だったのです。  女王は、攫われた娘の名前を狂ったように叫び続けました。王は騎士と共に魔法で飛竜の翼を撃ち、娘を取り戻そうとしました。しかし飛竜の鱗は硬く全く通じませんでした。  そして兄は、何も出来ずにいました。ただ、妹の悲痛な叫びを聞いて、小さな手を伸ばし、無力な自分を殺したいほどに憎むだけでした。  飛竜は王女を掴んだまま、空高く舞い上がったのです。家族には何も出来ませんでした。ただ王女の悲痛な叫び声を聞き、小さくなっていく彼女を見つめる事しか出来ませんでした。
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