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王子がそう言い終わる前に船員の一人が叫びました。「魔物だ! 掴まれ!」
どおん、という音と共に船が宙に浮き上がり、間もなく水面に叩き付けられました。その勢いに逆らえず、何人かの船員が海に投げ出されました。王子はとっさに剣を船に刺し、投げ出されることはありませんでしたが、魔導士はどうにもできません。彼女は風に吹かれた砂粒のように宙を舞い。海に投げ出されました。
――はっと目覚めた時、魔導士は真っ暗な場所にいました。狭く、暑く、息も満足に出来ませんでした。ただぶよぶよとした壁に挟まれて、咳き込むばかりでした。
魔導士は混乱していました。ここは何処なのか。海に投げ出されたはずなのに、どうして水が無いのか。魔法を使って壁を壊す事は出来るか。壁との距離が近すぎて、自分もただでは済まない……そう考えているうちに、まるで魔導士を潰すかのように壁が少しずつ迫ってきました。――壁に挟まれた足の骨が、折れた音がしました。雷のように痛みが身体を駆け抜けました。
「だれか!」魔導士は叫びました。「だれか、助けて! お父様! お母様!」
壁がその声を聞くはずもなく、じわじわと魔導士を押し潰していきました。
「王子様……! たすけ、」
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