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その村が攻め込まれるとは誰も考えていませんでした。なぜならそこはただの農村ほども食料のない、生きていくのがやっとの貧民たちが集まる村だったのです。
それでもその村は攻め入られ、多くの者が殺されました。男は子どもでさえも磔にされ、女という女は辱められました。
その中で、生き残った少年がいました。彼は自分ではどうにもならないと分かっていました。それでも何かしなければならないと、尖った石を持ち侵略者の親玉を討とうと考えました。殺せなくてもいい、目でも、歯の一本でも潰せればそれでいい。一生の傷を負わせれば。
小屋の影に隠れて、少年は機会をうかがいました。その間に何回もの悲鳴を聞きました。一緒に遊んだ女の子の叫び声。狩りに連れて行ってくれた兄さんの怒号。読み書きを教えてくれたおじさんの慟哭。その声を聞きながら、涙が出るのをぐっとこらえて少年は石を握り絞めました。
やがて、親玉が現れました。思っていたよりも細く、小柄でしたが、血に塗れた大きな剣を手に持っていました。
少年は何も考えられなくなっていました。石を握り、駆けだし、その男へと走っていきました。
親玉の顔を、目を潰してやると、ただそれだけを思って。親玉が少年に気付き、剣を振り上げました。ここで死んだっていいから、せめて、傷を、怒りを。少年はそう思い、足を速めました。
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