第一章

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これはもう、見ることができない光景。 僕はその写真をもう一度文集に挟んで、自分の将来の夢を見るという目的を放棄し、文集を閉じた。 自分の夢を思い出したとかじゃない。 そんなものもはや、最初からどうでも良かったものだと思う。どうせ叶えられている訳がない。それがなんであろうと。 僕が思い出したのは、伊敷(いしき)向(こう)夏(か)の将来の夢だ。 「お嫁さんになりたい」 そう無垢に、幼げに笑んだ彼女の笑顔はもう――動画の中でしか見ることができない。
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