妻を看取る。

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次の朝、世界は 絶望に染まったーーー。 妻の四肢は、 蝋で固めたように動かなくなった。 昨日まであんなに煌々しく生を謳歌していた妻の若々しい身体は、また元のように硬化していった。 妻は目覚めて状況を把握した途端、一気に年を取ってしまったようだ。 見開いた瞳は、徐々に焦点を失い、何かを悟って、静かに閉じられた。 涙が一滴、頬を伝った。 それだけで、一言も発さず、妻は何かを受け入れたようだった。 過酷な運命の悪戯か、急激な老化から転化して若返り、また老化していく。 独りで輪廻を行きつ戻りつしているようで、何処にも辿り着けないメビウスの輪の上をひたすら歩き続けているような空虚感。 妻は、私の腕を擦り抜け、何処か遠く手の届かない場所へと消えてしまいそうな気すらした。 そして、その次の朝、 妻の髪は銀色に変わっていた。
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