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その速度は、尋常ではなかった。
常識の範疇を超えて、物理法則さえも無視して、妻は加速度的に老いていった。
まるで一日が一年にでもなったように、ひと月が経った頃には、我々は親子ほども年が離れたように見えた。
妻本人の衝撃もさることながら、私の受けた衝撃も酷いものだった。
早回しのビデオでも見るように、愛する妻の数十年先の姿まで否応なしに見せられるのだ。
正直に言って、辛かった。
年老いた妻でも愛せる、と思っていたのはただの思い上がりだったのか。
自分も同じ速度で年老いていけば、きっとこんな風には感じずにいただろう。
だが、今は私だけが若いまま、時間に置き去りにされているのだ。
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