妻を看取る。

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それからまた、妻との日々は始まった。 相変わらず寝たきりの生活だったが、不思議なことに妻は、日に日に若返っていくように見えた。 このひと月程の急速な老化現象とは対照的に、急速な若返り現象とでもいうのだろうか。日毎に張りを取り戻していく肌を、何とも言えない思いで拭う。 妻とて、この変化に気付かない筈もない。矢張りまた困ったような、そしてほんの少しだけ嬉しそうな表情で、私を見つめる。 二人で首を傾げ合うことしか出来なかった。 そしてまたひと月が経ち、とうとう妻はあの日と寸分違わぬまでに若返りを果たし、あろうことか、ベッドから起き上がったのである。 そこにあるのは純粋な歓喜だった。
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