妻を看取る。

5/11
前へ
/29ページ
次へ
妻は今、全身全霊で歓喜を表現していた。妻の存在自体が、生きていることの歓喜そのものだった。 妻の看病で疲れ切っていた私も、同じように若返った気すらした。実際にはあの奇妙な老化現象が始まってから、ふた月程しか経っていなかった筈だが、それでも随分と私も年を取ってしまったような気がしていたのだ。妻と共に。 今、目の前にいるのは、あの日、あの朝、別れた時のままの、喜びに満ちた若々しい妻だった。 奇蹟だろうと何だろうと構わない。 遂に我々は取り戻したのだ。 過去を、自由を、若さを、そして日常を。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加