妻を看取る。

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「神よ… 私が何をしたというのですか」 神など信じているわけでもなさそうな妻が、ぽつりと 神に問いかけた。 ーーー心が、壊れた音がした。 こうして何度も何度も妻は年を取り、若返り、その輪廻を繰り返していった。 繰り返す度に、ひとつひとつの期間は徐々に短くなっていくような気がした。 若返っても、妻はもう喜ばない。 年老いて最期を迎えることへの恐れも、もうない。 ただただ虚ろな顔だけを残して、その魂はどこか遠くへ飛んでいってしまったようだ。 もはや妻は抜け殻だった。妻は、ただの入れ物になってしまった。 磨り減った心が洞になり、最早僕は妻を看護しているのか、妻だったものを保管しているだけなのか、分らなくなってしまった。
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