7人が本棚に入れています
本棚に追加
「君の希望はなんだい?何でも叶えてあげるよ」
さすがに海外旅行とか、何日も行程にかかるようなものは、寝たきりで外出できない妻にとっては不可能だといえるだろう。しかし、日帰り旅行程度なら叶えてあげられる。
この想像に、僕の方がわくわくしてきた。
一体、いつ以来だろう。こんなに心が躍るのは。
妻にはゆっくり考えるようにと伝えた。
困った顔で首を傾げた姿は、たよりない少女のようで愛らしかった。
妻の希望によって、どのように”奇跡の一日”に向けて生活していくか、その計画を立てるのは僕の役目だ。
妻が一番最初に叶えたい願いは何なのか。それは僕にとっても気になる問いだ。難問のクイズに頭を悩ますように、あれかこれかと思いついては、後で答え合わせをする時のために頭の片隅にしまっておいた。
あの慟哭の日以来、僕の日常は少しずつ変わってきていた。
最初のコメントを投稿しよう!