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「あなたと初めてデートした一日をなぞりたいわ」
妻は、初めての願い事を、そんな当たり前のことに使った。
その中に含まれているのが、中心にあるのが、僕との出来事だったことに、僕はこっそり涙した。
妻の中で、どれだけ自分が愛されているのか、想像しただけで胸が震えた。
「ありがとう。…生きていてくれて、ありがとう」
僕は搾り出すように、妻にそう告げた。
妻は、泣き笑いの表情で、小さく頷いた。
どんな状況であれ、僕と妻が出逢って、結婚して、二人で今こうしてここに生きている。それだけで、ただそれだけの事実が、とても尊いと思えた。
僕は、初めてのデートをなぞるべく、必死に計画を練った。
うろ覚えな部分は妻に確認し、周到に準備をした。
こんなに真剣に頭と時間を使ったことはないのではないかと思う程に、あのたった一度の”奇跡の一日”を最高にすべく、毎日を過ごした。
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