7人が本棚に入れています
本棚に追加
妻のこの可笑しな輪廻が回り始めたのは、妻が三十を迎えた誕生日からだった。
その日の朝。
妻は、仕事に行く私を、笑顔で見送ってくれた。私は早く帰るから、と笑顔で約束して、妻の頬に軽く口付けた。
平常ならそんな気障な真似はしない私が、誕生日だからとサービスしたことに気付いた妻は、驚きながらも嬉しそうに笑って、ぎゅっと抱き付いてきた。
幸福な時間が、そこには在った。
しかし、急な電話で呼び出された私が、次に対面した妻は、無数のチューブに繋がれていた。
最初のコメントを投稿しよう!