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幸い、私は在宅で仕事をするフリーランスの人間だったから、妻の傍らで常に世話をすることが出来た。
悪戦苦闘の日々だったといえる。
しかし、行政の助けや、妻への愛情で、何とか一人で凌いでいた。
だが、妻の気は晴れることはなかった。
呪文のように謝り続ける姿は、哀れとしか言い様がなかった。
幾ら夫婦とはいえ、まだ三十を迎えたばかりの女性が、寝たきりで介護される心情など、理解しうるわけもない。
妻の心は、壊れそうになっていた。
…いっそ、ただの生き人形になれたら。
窓の向こうに拡がる青く高い空を見つめながら、そう呟いているのを図らずも聞いてしまった時は、思わず身を隠して、男泣きしたものだ。
不甲斐ない己では、妻を救うことが出来ない。
神を呪いたくもなった。
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