第1章

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 こんな小さな子が僕に何の用だろう?  僕が女の子を見ていると、 指遊びをしていた目をチラッと上にあげた。 目が合ったので僕はんっと声を出して表情を緩めた。 すると、 女の子は歩幅の小さい足を器用に前へ動かしながら僕の正面に立った。 「僕に何か用かな?」  僕は優しく問いかけた。 「ほら、 マヤちゃん。 もじもじするためにお兄ちゃんのところに来たわけないでしょう?指遊びばっかりしないでちゃんと渡しなさい」 「うん」  マヤと呼ばれた女の子は母親らしき女性の言葉に従い、 指遊びをやめてポケットの中から何かを取り出した。 「はい、 これあげる」  女の子は仏頂面で口を尖らしながら言った。 手に握られていたのは僕のボックマークだった。
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