第1章

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「ですね」  僕もつられて笑いながら思った。 きっとこの人も本がすきなんだろうな、 と。 僕が愛用しているブックマークは薄っぺらい金色の金属でできており、 先端部分にはハートのマークがついている。 単体だけでブックマークと気づく人はほとんどいない。 たまに読書好きの女子が高校時代に僕のブックマークを好奇の目で見ていたが、 それをブックマークでなく、 しおりの代用品とみなしていた可能性もある。 いま思えば面と向かって「ブックマーク」と言われたのははじめてかもしれない。 「よくこの公園に来てますよね?」 「・・・はい」  僕は戸惑った。 この人はこんなにきれいな顔をし、 幼い子供もいながらまさか僕のストーカーだろうか、 と真剣に思った。
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