第1章

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 そう思ったりもしたが、 それだとなんとなく負けた気がするので僕は当初の予定通りにベンチに座った。 斜め掛けにしたバッグから本を取り出し、 ブックマークが挿さっている箇所を開いた。  両開きのページにぎっしりと詰まった文字が目に入る。 僕は一行一行、 それを読んだ。  思いのほか読書に集中できた。 話しかけてきた女性のことを考え、 どぎまぎしていたのが嘘のように物語の中に身を投じた。  僕が今読んでいる本は過去に心に大きな傷を負った女性の話だ。 それでもくじけずに前へ、 前へ進んでいく。 時折、 カクッと話が曲がることもあるが、 それはそれで女性の心理描写を巧みに表現してた。
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