第1章

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 桜の花びらのボックマークと、 僕が愛用している金色の光沢がまばゆいボックマーク。 本に合うのはどっちだ!  僕は横に置いてあるブックマークを手さぐりに探した。 右手で本を支えながら、 その間に桜の花びらを挟み、 左手を前後左右にベンチの上で滑らした。  あれ、 ない?  僕は本を閉じて視線を横に泳がせた。  風が眉にかかった前髪をなびかせる。 春風と表現するには強烈な勢いで、 公園に建ち並ぶ木々が共鳴するかのごとくざぁざぁと音を奏でていた。 「あっちゃぁ」  僕は額に手をつけた。  今の風でなく、 さっきの春風で僕のブックマークはどこかに飛んで行ってしまったのだろう。 強風に耐えられるほど質量はないので、 そう考える方が無難だった。 お気に入りのブックマークだったが・・・仕方ない。
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