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「もし、この先から来たというのであればとても優秀な方だと思われますが、お父様は今何をされているのですか?」
「死んだよ。かなり昔にね」
「そう……ですか。すみません」
「いいよ。気にしなくて。えっと、魔法の話だっけ。続けるね。ちなみに、魔石は精霊が結晶化したものだよ。精霊自体が生きてるか死んでるか曖昧なものだから死体って言って良いのかは分からないけど。だから魔石は精霊に干渉することができて、魔道具なんかに使われるんだ」
それもまた初耳だった。魔石は森や山や洞窟、更には街中でも人通りの少ない場所なら見つけることができる謎の鉱石。どこにでも存在する精霊が元になっているというのならある意味納得だ。
「で、本題。俺はそんな魔法に重要な役割を持ってる精霊に認知されない。だから魔法が使えないんだ」
「ですが、認知されていないと決まったわけでは……。この魔石でできたメガネがあると言ってもほとんど見えないわけですし」
「実はもう一つ俺には変な体質があってね」
そう言うとゴーフは私にもう一度メガネを掛けさせた。よく見るとぼんやりとどのあたりに精霊が多く固まっているかなどが分かる。私にメガネを掛けさせた後、ゴーフは腰に下げている麻袋に手を突っ込んだ。確か、その袋はマスターから受け取っていた物だったはず。
「これは魔石加工の時に出る魔石の粉なんだ。これを手に付けてと」
色とりどりの砂のような魔石の粉。それを手の平にまぶしたゴーフは私の目の前で空気をかき混ぜる。かき混ぜるというより、かき集めるという方が正しかった。ぼんやりとしていた白い精霊のもやがゴーフの手によってまとめられて色濃くなっていく。そしていくらか纏め終わったゴーフは私に言った。
「今俺が集めた精霊の場所でファイアシードを出してみて」
「ファ、ファイアシード」
言われるがままに手を伸ばして魔法を唱える。枯れ枝に火をつけた時と同じくらいの威力かそれ以下の力で放ったレベル1の魔法。しかし、実際に発現した魔法は人一人覆いつくしてもおかしくない程の大きさの火柱となった。
「おおーすごいすごい。とまあ、こんな風に俺は肉眼で精霊を見ることが……って大丈夫か?」
少しは想定していたとはいえ、私は驚くほどの火柱に飛び退いて座り込んでしまっていた。
「大丈夫です。少し吃驚しただけですので」
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