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「火傷とかしてないなら良かった。ソフィアちゃんの綺麗な肌に傷が付いたらどうしようかと」
そう言って私に手を差し伸ばすゴーフ。私はその手を掴んでスッと立ち上がると服に付いた土を払う。
「それで、休憩がてらここでソフィアちゃんにお話」
ゴーフは水の入った瓶に先程の魔石の粉を少し入れ火にかけた。沸騰して薄い虹色になったところでそれを濾過してコップに移し替える。
「心の力を少し回復させる効果のある水だ。これを飲んで体を休めたらソフィアちゃんにはここで待っていてほしい。幸い、魔物が近付きにくい澄んだ精霊が多いから俺と離れるとはいえ塔の中よりは安全だろう」
ゴーフから受け取った水を少し冷まして口にする。なるほど。確かに体の奥の方から暖かくなる感じがする。しかし――
「私も付いて行きます。依頼を最後まで見届ける義務があると思いますので」
ゴーフの提案をはっきりと断った。しかし、ゴーフは私の返事を予想していたのか、頭をポリポリと掻いて溜息を一つ吐いただけ。
「そう言うと思ったよ。でも約束してくれ。俺より前に出ない事。いいね?」
「分かりました」
ゴーフも私と同じように魔石の粉を溶かした水を飲むと塔の扉に向かった。鍵のかかっていない扉を開けて一歩足を踏み入れた直後、ゴーフはばっと手を広げて止まる。急に止まるものだから私は反応しきれずにゴーフの背中に身体ごとぶつかってしった。
「どうされたのですか?」
「入る前に中の様子を確認しておこうと思ってね」
「そうですか」
確かに出会い頭に致命傷を負わされるなんて事になったら笑えない。実際、入って直ぐのフロアには人型に近い悪魔のような魔物が一体彷徨っていた。人型に近いということはそれだけ知能も戦闘技術も高い証拠。学校では単独で遭遇した場合は速やかに退避するように教わる程。二対一とはいえ、本来なら逃げた方が良い相手だ。
「ソフィアちゃんが扉を閉めたら俺が奴に接近する。もし隙が出来たら魔法をぶちこんでくれ」
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