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「いやあ、ね? ソフィアちゃんにぶつかってもらうと嬉しいじゃん?」
「ふざけるのか、真剣にするのかはっきりしてください!」
流石の私もはっきりとした言葉でゴーフを注意した。にもかかわらず、ゴーフはヘラヘラと謝罪の言葉を述べた。
「ほら、可愛くて柔らかい女の子が後ろから飛びついてくれたら士気が上がるって言うかさ? ね? そんなに怒らないで?」
別段怒っているという程ではないが、そのように軽々しく言われると信頼は無くなる。どこまで本気なのかが分からない。
「良いから早く行きましょう」
そう言って目的のために進むしかない。
階を上がる度にまるで縄張りかのようにフロアに一体魔物が巣くっており、それも少しずつ強さを増していった。最上階は七階で、次は六階に上がるところ。それまでのフロアも敵が少しずつ強くなっていくとはいえ、ゴーフがほとんど一方的に切り刻んで倒してしまっていた。私が魔法を撃ったのも五階でレベル2の魔法を牽制として使っただけだった。
一階と同じく各フロアに部屋があったが、二階で初めの部屋と同じように私を追突させようとしたため、三階以降の部屋は扉も開けずに進むように進言した。もちろん二階の部屋にも魔物はいなかった。各フロアに一体魔物が縄張りにしていて他の魔物はいないのだろう。
階段を上がり六階のフロアを見ると、それまでとは比べ物にならない大きさの魔物が鎮座していた。ドラゴン――。本で見た事のあるドラゴンよりは遥かに小さいとはいえ、四足歩行状態でも頭の高さは三メートルを超えるだろう。地竜と呼ばれる羽根の無い種で、代わりに力が強いとされている。
「短剣と鞘での殴打じゃ、ちょっと時間かかるな。レベル3……それかレベル4の魔法を撃てるようにしておいてくれ」
「分かりました」
時間がかかると言うからには倒せないことは無いのだろう。しかし、私たちは急いでいる。少しでも早く倒して次に進まなければいけない。ゴーフが駆け出すと共にレベル3魔法のイメージを作り始める。
ファイアスピア――。鋭く重く、敵を突き抜ける。炎は硬く、渦巻き、形を崩すことは無い。
ゴーフはドラゴンの爪を弾き、指を切断し、鞘に入ったままの大剣でドラゴンの顔面を殴打する。常にドラゴンの顔を自分の方に向けないように体の側面に回り込んだり、顔の下を通って殴打を浴びせながら反対方向に移動したり。
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