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ゴーフはそう言って塔の下で作った魔石の粉の水を私に差し出して六階にある部屋を回った。魔物の確認だろう。何もいなかったことが分かって私のところに戻ってくると、座り込む私の隣に同じように座ったゴーフ。
「この先にソフィアちゃんのお父さんがいるんだよね」
「はい」
「そこでお父さんを殺さずに助けられる状態だった場合、ソフィアちゃんに手伝って貰わなくてはならないんだ」
「私なんかが役に立つのでしょうか」
先程の判断ミス。それが尾を引いて否定的になってしまう。ゴーフの戦闘能力と対比して自分がどれほど劣っているのか理解しているからこそ、頼られることに不安を覚える。
「むしろ、ソフィアちゃんに頼るしかなくなったんだ」
「頼るしかなくなった……? もしかして」
「無し! ごめん今の無し! ちょっと言い方変えさせて!」
慌てて立ち上がったゴーフは狼狽えるように身振り手振りをする。こんなに分かりやすく感情表現が出来たら私も理解してもらえやすいのかな。なんてことも考えつつ、先ほどのゴーフの言い方に含まれているものを見る。五階から上がって来た魔物の死体。
苦戦とまでは言わないにしても、それなりに戦って倒した五階の魔物を一撃で葬った投擲物。私の予感は的中した。私の視線に気付いたゴーフは観念したといった様子で話し始める。
「爆裂石って呼ばれる珍しい魔石だ。衝撃で炸裂して魔物や悪霊に大きなダメージを与えることができる」
爆裂石――。一般的には矢じりに使うことで魔物への攻撃力を上げる使い方をする魔石。投げる事で炸裂させるだけの衝撃を与えられる事には驚きだが、一瞬見えたあのサイズの爆裂石は確かになかなか手に入らないだろう。つまり、そんなものを私の判断ミスで、私の事を助けるために使ってしまったのだ。
「私なんかの為に……本当に……すみません」
「もしかして、俺がソフィアちゃんの為に頑張ってるから責任感じちゃってる?」
ゴーフの質問に沈黙で返す。私の為に働いてくれているのだから、責任は全て私にある。元より何かあっても私のせいな訳だし、その上私のミスが重なったのだ。背負うしかないと分かっているし、覚悟もしてきたつもりだったが情けなくも押しつぶされそうになっている。こんな姿を見せてしまっている事も更に申し訳なく感じているのに変われない。
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