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「トモキ、今日は休みか?」
「いや、そろそろ出るよ」
ここはカンボジアの小さな村。
すっかり村の人とも顔なじみだ。こちらの水にもなじんだ。
ロボットは思った以上の成果を上げている。
会社からは年末をもって別の社員と交代になると連絡が入ってきている。
日本に帰れる。
あの日、日本を発ってから一度も帰ることはなく今日まできた。
あれから二年。
既に十月の半ば。きっと今年も送られてくる。
こっちに着いてから1ヶ月後に彼女は約束通り彼女の名前の花の画像を送ってきた。
それから何度も何度もやり取りが続き、一人奮闘する僕を支えてくれた。
いつしか僕達の間に、友情以上のものが芽生えていた。
ピロン
来た。
パンツのポケットに突っ込んでいたスマホを取り出す。
Skypeの着信。
『今年も、無事にコスモス鑑賞ウィーク終了しました』
メッセージと共に、送られてきた動画を再生する。
白やピンク、濃い赤色のコスモスをバックに、高齢者たちとVサインをする彼女がいる。
がやがやと楽しそうだ。
撮ってくれているのは同僚らしい。
もう一つの動画を再生する。
すっきりとした青空に向かって、ゆらゆら揺れる数えきれないコスモスが画面いっぱいに映っている。
再びメッセージが入る。
『今年は帰ってこれますか?』
僕もこの日のために撮っておいた動画を添付してメッセージを送る。
ロボットに登って元気に遊ぶ子供たちと、彼らを見守りながら畑を耕す村の人々。
『帰ります。秋桜のもとに』
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