35人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
「東南アジアの国の一つだよ。タイとかミャンマーとかベトナムとか聞いたことない?」
天を睨んでも答えは出ないって。
「検索すると出てくるよ」
彼女の手の中にある僕のスマホを指さす。
「カンボ、ジャ?」
一文字ずつ入力をするのは他人の携帯だから使いにくいからか。
「地雷撤去、と入れて」
彼女の指が固まり、僕を静かにみる。
「地雷撤去?」
僕は静かに頷く。
カンボジアと地雷。検索をかけるとほとんどセットみたいに出てくる。
あちこちに埋められ未だ悲劇を生み続けている負の遺産。
「僕の勤める会社が開発した地雷撤去ロボットを現地投入するんだよ」
僕の勤める機械メーカーは決して大手ではないけれど、戦後から工業用ロボットを制作してきた会社だ。
地雷撤去ロボットそのものは高額で決して元が取れるようなものじゃない。
だけど必要としている人々がいる。毎日地雷のなくなる日を夢見ながらなくした手や足、家族のことを思いながら地雷の埋まる畑を戦々恐々と耕している人々がいるんだ。
最初のコメントを投稿しよう!