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試作品が出来た時は社長自らが、ロボットをもって現地入りした。その後、安全保障貿易管理(武器に転用できるものの輸出規制)の問題なんかを一つずつクリアし、今回念願のカンボジアへの輸出第一号となったんだけど、万が一の故障やメンテナンスのために一人社員が出向することになった。 白羽の矢が立ったのが僕。 若いことと独身であること。入社当初から技術部でロボットに関わっていたことが理由と言われたけれど。 本音は僕に親や兄弟がいない、天涯孤独の身だからじゃないかな?なんて、思ってみたり。 だけど。 一生涯の間にこんなに重要でやりがいのある仕事ってどれだけあるだろう。もちろん自分の命を懸けるんだけどさ。 安全を確保するため自分が危険行為をする、というのはなんだか矛盾してるけど、逆にロボットが100パーセントの力を出せば、皆が安心して暮らすことが出来るんだ。 そう思えば、案外悪くない。 まあ出来ることなら恋人の一人も作りたかったけれど。 「いつまで?」 「うーん。多分二年くらい。」 もしかしたら、その後他の国に行くことになるかもしれない。 「帰って来るよね」 そんな目で訴えないでくれ。変に誤解しそうになるじゃないか。 本気で僕のことを心配しているって。 「知り合ってすぐにサヨナラなんて」 そうだな。でも一期一会っていうし。 今日ここで会ったのには、きっと何らかの意味があるんだろう。     
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