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大分気温が上がってきた。
潮のかおりは夏とは違って、緩く僕の体を包み込む。
ここは日本海だから日の出はない。だけど明るくなるのはやっぱり水平線から。反射するからかな。
穏やかな波。
波すら立っているのかいないのか。
手元のスマホ、そろそろ電池切れるな。
予備バッテリー、差しておこう。
折角だからもう少し。
ついでに炭酸ペットボトル。
甘味のないかすかにレモンの匂いがするこの飲料は酒を割るのにいいんだろう。
これからは僕の日常的な飲み物になりそうだけど。
あっちでも買えるかな。
腕時計の針が九時を指している。
砂浜を見渡しても、人影はまばら。
というか、まず観光客は来ないだろう。
夏も終わったビーチ。地元の人が散歩に来る程度だ。しかも台風の次の日なんて。
ほら、足跡も僕がつけたものだけ。
まあ、つけても波がさらって綺麗にしてしまうんだけど。
よし。
もう少し撮ろう。
海にスマホを向けることは、この先しばらく難しい。
今のうちに。
今のうちにできるだけ。
背中越しに車の音を聞く。
ダイビングに来たのかもしれない。
海の底はまだ濁っているかも。
波の表面は落ち着いて緩やかだけど潜ってみなけりゃわからない。
静かに、静かに波の音がさざめく。
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