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長くここに座ってるから、何だか気になって」
長く?
いつから見てたんだろう。
「その。私二時間位前からそこに……」
指差す先は、夏には浜茶屋が建てられていたんじゃないかと思う場所の、更に向こう。
階段状の防波堤。
あれ?
いたっけ?
全然気づかなかった。
「よく言われるんです。存在感がないって」
小さく微笑む。
「僕も二時間くらい前からいるけど、同じくらいに来たんですか?」
「私がここに来た時にはもう座っていました」
そうなんだ。
どれだけ夢中になってたんだか。
「隣に座ってもいいですか?」
隣?
砂の上に直に座るのは嫌だったから新聞紙を敷いていた僕は、一旦立ち上がって一日分を半分に分けた。
「どうぞ」
「有り難うございます」
ぺこっと頭を下げ、がさがさと音を立てながら、彼女が腰を下ろした。
僕も再び腰を下ろす。
ざざっと波が立つ。
夏はざざっとどころか、ザバアッ、ダップーン、ザーッ、ザッパーン、ダップーン、ザザーッ………
冬はもう一つ波が高い。そのうえ空が暗いせいで、波も鉄のような冷たい光を放ちながら打ち寄せる。
波音も荒れた日にはゴゴッ、ザバアッンて感じだ。
春はうって変わって穏やかだ。
でも秋とは違う。
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