4/17
前へ
/19ページ
次へ
長くここに座ってるから、何だか気になって」 長く? いつから見てたんだろう。 「その。私二時間位前からそこに……」 指差す先は、夏には浜茶屋が建てられていたんじゃないかと思う場所の、更に向こう。 階段状の防波堤。 あれ? いたっけ? 全然気づかなかった。 「よく言われるんです。存在感がないって」 小さく微笑む。 「僕も二時間くらい前からいるけど、同じくらいに来たんですか?」 「私がここに来た時にはもう座っていました」 そうなんだ。 どれだけ夢中になってたんだか。 「隣に座ってもいいですか?」 隣? 砂の上に直に座るのは嫌だったから新聞紙を敷いていた僕は、一旦立ち上がって一日分を半分に分けた。 「どうぞ」 「有り難うございます」 ぺこっと頭を下げ、がさがさと音を立てながら、彼女が腰を下ろした。 僕も再び腰を下ろす。 ざざっと波が立つ。 夏はざざっとどころか、ザバアッ、ダップーン、ザーッ、ザッパーン、ダップーン、ザザーッ……… 冬はもう一つ波が高い。そのうえ空が暗いせいで、波も鉄のような冷たい光を放ちながら打ち寄せる。 波音も荒れた日にはゴゴッ、ザバアッンて感じだ。 春はうって変わって穏やかだ。 でも秋とは違う。     
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加