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「京介はイケメンだからわかんないんだよ」 『確かに。お前はキャワイイ~って言われるタイプだしな』 「うるさいな」 『褒めてんだよ。俺はお前の顔好きだよ』  密かに気にしていることを指摘されて、つい唸ってしまう。  京介とは正反対。伸び悩んだ一七〇センチギリギリの身長と、筋肉のつかない貧弱そのものの体。鼻や口は小ぶりで、目だけはやけに大きい。そのせいで子供っぽく見えて、二十歳を迎えていても居酒屋では俺だけ年齢確認される。  もうちょっと筋肉があれば様になるのに、と思っても、残念ながら運動自体好きじゃない。家にこもって朝までパソコンでアニメやドラマを見て、ゲームに勤しんでしまうタイプ。だから夏休みが終わったばかりだというのに、視界に映る俺の両腕は細っこくて真っ白だ。 『ふふ、まいーや。俺バイトまでちょっと寝るから、適当な時間に起こして』 「んー」  それから間もなく、小さな寝息が漏れ始めた。  京介とは大学でも一緒。家に帰ってからほとんどの時間、電話で繋がりっぱなしだ。  実家から大学に通っている俺と違い、高校の頃、仕事の都合で両親が揃って海外にいってしまった京介は、現在大学近くのアパートに一人暮らししている。  最初に電話を始めたのは京介だ。一人だけの部屋にいると落ち着かないからと夜中に電話をかけてきたのがきっかけ。「寝息が聞こえたら切っていい」なんて、自分勝手な電話を当時はよくかけてきた。  当初は何気ない話をしていた。次第に会話を無理にしなくとも、電話を繋げたままお互い好きに過ごすようになった。話したい時に話しかける。現代の無料通話サービスは素晴らしいなと思う他ない。  生活音をそのままに繋がっている感覚は、どこか窮屈で、けれどどこか心地いい。 『……、……、』  同じ空間にいないのに、確かに電話越し、京介が息をしている。向こう側で生活しているのを感じる時間。会話をしていなくても、見えなくても、確かに隣にいる。  彼女といる時は決して感じたことのない、穏やかに流れるこの時間が好きだ。  京介だからいい、自由に、だけど一緒にいる時間。  この瞬間だけは、いつかひとりになる想像を忘れられる。
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