ストーカー

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 恐怖が去ったことに気が緩んだのか、その場にへたり込んだ彼女が泣き出す。そんな彼女を必死に宥め、それでも怯えが拭えない彼女を一人にできず、その日俺は彼女の部屋に泊まった。ああもちろん、弱ってるところにつけ込むような真似はしてないからな。  その翌日、共通の女友達に、泊まったこと以外の一部始終を話すと、女友達は『アンタを選んでよかった』と俺の肩を叩いた。  意味が判らず、どういうことだと問いかけると、女友達いわく、俺は凄まじい霊的能力の持ち主なのだと言われた。  昨日彼女が言ったように、元彼は半年前に当てつけの自殺で亡くなっていた。だが、死後も彼女に対するつきまといは絶えず、通常のストーカー被害とは違うから警察に届けることもできない。それでほとほと困り果てていた時、霊感のある女友達が俺の潜在能力を見抜き、死んだ元彼対策にと彼女に俺を紹介したということだった。  これまで霊体験なんてしたこともないのに、俺にそんな力があったとは。 「ねぇ。もし嫌じゃなかったら、アンタ達つき合っちゃえば? あの子も幽霊撃退の意味だけじゃなく、何かと自分に親身になってくれるアンタのこと、かなり気になってるみたいだから」  そんなことを言われても、彼女は色々と精神的に苦しい状況だから、つけ込むような真似は…。  そう思ったけれど、その後も幽霊ストーカー対策で彼女と顔を合わせ続ける内に、お互いそういう気持ちが芽生えて、結果、俺達はつき合うようになった。そして多分、このまま相手が生涯の伴侶となることだろう。  見た目は平凡、とりたてて何が凄いって所がある訳でもない。こんな俺だけど、彼女を想う気持ちは誰にも負けないから、この先一生、どんな厄介な幽霊からも、俺は彼女守り抜くと誓うよ。 ストーカー…完
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