ストーカー

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ストーカー

 大学の女友達に相談をされた。  自分の友達が元彼にストーカーされて困っている。ヨリを戻したくないので新しい彼氏ができたと嘘をついたのだが、相手がまるで取り合わない。なので、男友達に頼んで彼氏のフリをしてもらおうとしたのだけれど、ほとんどが元彼との共通の友人なので頼みにくい。だから、その子とまるで関わりのない俺に暫く彼氏のフリをしてもらえないだろうか。  正直、面倒な話だと思った。だけど俺は、この話を持ち込んできた女友達に色々と借りがあったし、同じ男として、別れた相手につきまとう元彼とやらの行動はよくないと思った。ついでに少々情けないが、この話を受けても誤解される彼女もいない。  そんなこんなで、俺は元彼とやらを諦めさせるための、インチキ彼氏を演じることになった。  紹介された相手は、正直、かなり俺のタイプだった。  これが合コンや普通の紹介なら、間違いなく浮かれるところだけれど、俺の役どころはストーカー撃退のためのインチキ彼氏だ。頼られた以上、相手に不快な思いをさせることはできないので、やましい下心は封印だ。  とりあえず役目としては、週に何回か彼女を独り暮らしの家に送り届ける。その半分は迎えにも行く。これが俺の頼まれごとだ。  相手はしきりに申し訳ないと言っていたけれど、女友達には、ノートを見せてもらうとか、金欠極まりない時に奢ってもらうとかの恩があったし、何より俺が、この子と一緒は悪くない気分だったので、まったく苦にはならなかった。  そういう対応だったせいだろうか、次第に彼女も打ち解けてくれて、帰りがけに一緒に食事をしたり、休みに出かけるようにもなった。  そんなある日。
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