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すよ?せめてオレのリクエストくらい、たまには前向きに考えてもいいんじゃないですかね?」 「うっ…」 「商店街の福引で当たった温泉宿までの交通費。それくらいは計上してもいいんじゃないですか?」 「それで、ここの事務所は二日ほど閉めるワケだろう?そうなると、損失が…」 「来もしない客の為に、一日中エアコンをつけている方が損失です」 ――ごもっともだ。  完全に反論を封じられ、綾瀬は指に挟んだタバコをもてあそぶ。 「…しかし、お前が当てた福引なんだろう?友達とか彼女とか、親孝行とかに使った方がいいんじゃないのか?」 「野郎と二人で行くなんて冗談じゃないし、彼女も今はいません。両親は船旅でオーストラリアとヨーロッパに旅行中です。福引の期限は今月末までです。この状況で、いっその事、慰安旅行に行きましょうと言うオレが間違っていますか?」 「…オレも野郎に入らないのか?」 「所長はオレの雇用主ですし、四十のオッサンです。オレ的にはジャンルが違います」  佐々木の断言に、綾瀬は、二の句が付けられず項垂れた。 「…分かったよ。探偵業は二日休業だ」
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