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掃除は苦手だが、そこは仕方がない。掃除機は家に似合わぬ最新式のコードレス。掃除が済んだら、褒美に街へ行く。デジタル配信が主流だが、たまにはCDも買おう。おや、気になる新譜も発見だ。夜の楽しみが増えた。
その内に、おんながひとり出入りするようになるかもしれぬ。特別美人ではないが、犬猫が好きで、はじめは猫に会いに来る。だんだん飯を一緒に食うようになる。将来のことを考える。
彼女は猫をかわいがってくれる。たまたま見つけたおれの絵を、好いてくれる。それは失敗作だと隠しても、いいじゃん、別に、と奪われてしまう。猫とふたりで面白がって、おれの絵を見ている。幸せそうに猫に語りかけている。不思議と映画の趣味は合わなくて、お互いジャンルがひろがった。おれはゾンビ映画だけは見ないぞと宣言しておく。
豪邸に住むのもいいが、このぐらいが、おれの理想だ。角の柿の木は、実は大家のものらしく、収穫中に通りかかったら気前よくいただいてしまったりして。行きつけの飲み屋の主人にお裾分けして。焼き柿をつまみに飲むのも気に入っちゃったりして。
さァ、楽しくなってきた。さしあたり、宝くじでも買いに行こうか。一気に現実が吹き抜ける。
いや、なんの、負けてたまるか、天気もいいし、帰りにビールも買ってやる。近所の野良猫は、おれに少しもなついちゃいないが、お向かいのお宅には、仔犬が来たって言うじゃあないか。おれもいつかは!
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