午睡男

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猫がにーにー鳴いている。戸棚の上から、餌の袋を取り出して、ちょっと洒落た皿に用意してやる。ついでに自分のおやつは、袋のままでいい。 あったかいココア。秋の夕陽。はぐはぐと飯を食らう猫。ちょっとしょっぱいおやつ。好きな音楽。買ってきたばかりの文庫本。素晴らしい! 携帯が鳴る。週末に飲みの誘い。もちろん行こう。おれは、金には不自由していないのだ。 豪遊するような金はないが、毎日働かなくてもいいぐらいの安定があって、趣味の絵なんて描いて、時々、それが売れる。その金でちょっと飲んで帰る。頻繁に、こうして友人の誘いもある。だいたい断らずに行くことができる。 遊びや仕事に出ない日は、朝はたっぷり寝て、昼頃起きる。寝癖もそのまま飯を食って、猫を膝に抱いて、次に描く作品のイメージを模索したり、本を読む。畳に寝転んで庭の雑草を眺めると、案外いい案が出たりする。 ひとりの食事も悪くない。ガスコンロを持ち出して、ひとり鍋も気に入りだ。もちろんビールも忘れない。ビールがうまけりゃ、なんとかなる。だいたいビールはうまいのだ。日本酒や焼酎の晩もある。
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