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「では、失礼します」
「ご足労いただきありがとうございました。また次回お待ちしております」
エントランスホールの自動ドア付近で、聞き覚えのある声に視線を向けた。
視線の先には、来客者と談笑している女性社員の姿があった。横顔でしか確認できないけど、全く記憶にない。
誰だっけ……
気になって、もう一度彼女に視線を向けた。
来客者を笑顔で見送り、外に出たことを確認すると、安堵の吐息をついた。
ほんの一瞬…
柔らかな微笑をたたえた素の表情を俺は見逃さなかった。
その横顔に
なぜか目が離せなかった。
戻ろうと向きを変えた彼女を初めて正面から見たが、やっぱり記憶にない。
俺と目が合った彼女に、笑顔で会釈をされた。
俺も軽く口角をあげて会釈を返した
が、向けられた仕事用の笑顔になぜか落胆した。
なぜだろう…
もう一度彼女の素の表情を見たいと思った。
たった今
偶然居合わせただけの彼女なのに
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