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水族館をたっぷり堪能した後は、観光スポットで有名な神社にも連れて行ってもらい、帰路についた。
「お疲れじゃないですか?運転代わりますよ」
「ありがとう僕は大丈夫だよ。美紗も疲れただろう?眠くなったら寝てていいよ」
「いや、それは…」
そんなこと、申し訳なくてできない。
けれども、日の落ちた高速道路って、助手席に乗ってるだけだと、なんであんなに眠くなるんだろ…。頑張って起きてなきゃ!
「寝顔がかわいくても、寝込みを襲ったりなんてしないよ」
「えっ!」
―なぜそれを!―
「くっ…はははっ、 過敏すぎ。って、元凶は僕か」
元凶?なにが?
寝顔盗み撮りの事じゃなくて?
まって、さすがにそれがバレるわけない…。
ん?あっ!
───『…そんな無防備な顔してると危ないよ』
そっちー!!
思い出したと同時に、今思い出さなくてもいいことまであれこれと鮮明に頭に浮かんできて、顔が燃え上がった。
私の行動を尚も可笑しそうに笑う速見さんに対して、更なる罪悪感が押し寄せてきた。
「まあでも、前言撤回かな。僕の前で無防備だったら、それはそれで嬉しい」
「な…なぜですか?」
「それだけ心を許してくれたってことだろ」
―ズキン…―
ゴメンナサイ…。
私は本当に自分勝手だ。
速見さんはこんなにも甘く優しいのに、私の事をこんなにも大切にしてくれるのに。
先ず頭に浮かんだことは、違う人の事だったなんて…。
それからしばらくは、無言だった。
気まずいとかそういうのではなくて、ただそそういう空気だっただけ。
速見さんは時々、ステレオから流れてくるBGMを鼻歌混じりにポツリポツリと歌っていて、そんな姿を時々横目で覗きながら、考えていた。
いつまでもこんな優柔不断な事をしていたら、いつかバチがあたるかもしれないと…。
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