295人が本棚に入れています
本棚に追加
まずい…急に眠くなってきた。
暗い車内に、眠気を誘う心地いい揺れと静寂。
眠気を打破しようと窓の外を向いて、目をパチパチさせてみる。
「お腹空いてない?」
「いえ。速見さんは大丈夫ですか?」
声をかけられたお陰で、パッと眠気が飛んでいった。
「平気、昼が遅かったし。じゃあご飯食べるの美紗の家の近くでいいか」
「そうですね」
―そっか…―
お昼過ぎまで水族館で魚を堪能してきた後、海鮮丼が美味しいお店に行き海鮮を食べるという、シュールなランチをしていたのだ。
だから、嬉しいと感じて顔がにやけそうになった。このまま寄り道しないで帰るのかと思っていたから。
帰りの道も所々渋滞したけど、さほど遅い時間にもならず戻ってこれた。
何を食べようかという話になり、昼は和食だったから洋食か中華、ならば暫く行ってないお店に行こうと盛り上がり、結果ファミレスで話がまとまった。
帰宅ルートの途中にあるファミレスを見つけ、そこに寄ることにした。夕食時のピークはとうに過ぎていたお陰で、すぐに席につくことができた。
「考えてみたら、ファミレスに来たのも久しぶりだ」
「そうなんですか?どれくらいぶりなんですか?」
確かに…速見さんとファミレスってイメージが結びつかない。
「うーん、2年?3年ぶり位かな」
「ほんとに久しぶりですね。私は歩さんと会社近くのファミレスで期間限定スイーツが出ると食べに行きますよ」
「ああ、あそこね。そうだったんだ。僕も大学時代は学校の近くのファミレスによく行ってたんだけどな」
大学生の頃…。
―あの頃の私は、お客と店員として会っていたのかな…?でもそれなら、仲間内で話題になってもおかしくない。いや、あの顔面偏差値高かったから…―
「何を考えているの?」
「…!いえっな、なにも」
思考を読まれた気がして、心臓が跳び跳ねた。
「まだ決まってない?いいよ、ゆっくり悩んで」
あっ、メニューの事だったのね…。
そりゃそうか。頭の中で考えていることまで気づかれるわけない。
「すみません。ありがとうございます」
優しく目を細め、キラキラの笑みを見せてくれる速見さんに、また罪悪感がわいた。
今日ずっと一緒にいて楽しかったし、嬉しかったのに…なぜこんなにも違うことに意識が向いてしまうのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!