迷い

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二人で休憩所に向かって歩き出したが、邪魔をしてしまったのではないかと不安になった。 「歩さん何かの勉強中でしたか?」 「んー?あれ?そうねー…。美紗は?どうしたの思い詰めた顔して」 デスクを見た感じ仕事か何かの勉強をしていた様に見えたが、またもや…ひらりとかわされた気がする。 「…やっぱりそんな顔…してます?」 「してるしてる。朝からオバケが出たのかと思った」 オバケって…。そりゃこの数日あまり眠れてないけど、そんなにひどい顔だったのかな。 「速見くんと上手くいってるみたいだったから、うっきうきの上機嫌のはずなのになーんか違うのよね」 ―チガウ…― そう。何か違う。 求めていたはずのものが、願っていたはずのことが少しずつずれてきている。 河野さんを好きだという自覚がある。 それなのに、向けられた速見さんの優しさに惹かれているのも事実。 どうしたらいいいの? 「歩さん、私…」 「おっ、おはよう」 ジャスト?バット?なタイミングで、休憩所の入り口から桐谷さんが出てきた。 「「おはようございます」」 ―ホッ…― 桐谷さんが現れて、心の奥底でほっとしている自分がいた。 今の自分の不安定さの勢いにのって、洗いざらい話してしまったら、なんて身勝手なんだと軽蔑されてしまいそうで怖い。 誰かに話して、自分が楽になりたいだけ。 でもそれは、してはいけない気がする。 「あー二人でお茶飲むところだった?美紗ちょっと待ってて、いつものでいいか?」 「はい?」 手に持っていた二本の缶を歩さんに渡すと、桐谷さんはくるっと振り返って自動販売機に向かっていた。 歩さんの手にはブラックコーヒーとレギュラーコーヒーの缶が二つ。 いつも二人が飲んでいるものだ。 ―これって…― もしかしたら、お邪魔なのは私の方? 考えてみたら、朝早くから二人でオフィスにいるのを何度も見ている。 それに、さっきの歩さん…桐谷さんを待っていた? この二人って… 「美紗!いくぞ」 「えっえ!」 言うと同時に缶を軽く投げる素振りを見せ、慌てて受け取ろうとした。 が、缶は宙を舞うことなく桐谷さんの手の中にあった。 「あははっ。どうぞ、目が覚めたか?」 手渡されたカフェオレを受け取る。 「ありがとうございます。もう、朝から驚かさないでくださいよ」 「呆けてたから、目を覚まさせてやろうと思って」 こうも立て続けに言われると…そんなにひどいのだろうか。 こんな顔を速見さんが見たら、きっと気にしてしまう…。
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