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「で?美紗は何を悩んでいるの?」
「あっいや、悩みというほどの事でもないんです。それより歩さん、桐谷さんの仕事のお手伝いはいいんですか?」
桐谷さんは気を使ったのか、やることがあるからとすぐにオフィスに行ってしまった。
前に歩さんは手伝っていると言っていたが、いいのだろうか。
「美紗にはもう話してもいいかな」
話って…やはりそうなのだろうか。
そう考えると、色々納得いく部分も出てくる。もしそうなら、凄いことだと思う。
宮本さんは可哀想だけど。
「なんですか?」
「私ね、昇進試験を受けられることになって、その勉強のために早く会社に来てるの。桐谷さんの仕事を手伝わせてもらっているのもそのためよ」
昇進試験…。
全くの予想外の話だったが、これはこれで凄いことだ。
「凄いですね歩さん!やったじゃないですか」
「いやいや、試験はこれからだし。試験の募集が出るまで、他の人達にはまだ内緒ね」
「わかりました。私はてっきり…実は私達付き合ってます!って言われるのかと思いました」
「えーそれはないない」
「そうですか?朝二人だけでいるときって、なーんかいい雰囲気ですよ。二人だけの世界みたいで」
「…まさか、だって桐谷さんから見たら、私は妹の友達よ。やりづらさはあっても、そういう対象としては見ないでしょ…」
そうかな…?そういうものなの?
関係性がどうのなんて、関係ないと思う。
「だいぶ話がそれちゃったね。
…悩みじゃないなら、吐き出したい事があるんじゃないの?」
クリっとした丸い瞳で真っ直ぐ見つめられたら、今さっき言うまいと決めたはずなのに、もう吐き出してしまいたくなる。
自分の意思の弱さと不安定さが嫌になる。
「いえ、大丈夫です。何もありません」
「も~~何もないなんて顔してないのに、この!ブレない強情者め」
「い、いぃたいですぅ」
頬を摘ままれこねクリ回された。
―ううん。そんなことない。―
むしろブレまくりの弱虫なんですよ。
保身が第一で、自分の事しか考えてないだけ。
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