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Prologue
立太子の儀を終えて、招客のうち皇太子キリエルと歳の近い近隣諸国の王侯諸氏貴族の子息が談話室で猥談の花を咲かせていた。
そういった話に積極的でない者も太子との関係を構築するために部屋に残って愛想笑いをしている。
下品た笑いの中で、皇太子キリエルが宣言した。
「一人の女だけを愛する? いつの時代の話だ? 俺は国中の女を孕ませてやる」
ただ一人を愛せないのなら、数を愛そう。
談話室の端で、さも関係なさそうにしているはずの姿を探した…。
まだ8歳だったころを思い出した。
春のエスメラルダ公国。
黄色、青、橙色、緋色、白、空色、薄紅、紫。
さまざまな色のツツジが咲き誇る庭園の中で、美しい少年に出会った。
真っ赤なアザレアの垣根から、まるで妖精が現れたようだった。
エスメラルダ公国ステファーノ大公太子の立太子の儀に参列の国賓・マウンタニア皇帝に連れられて、はじめてのエスメラルダ公国。
大公太子の子供達、その他の公子、姫君、大公弟エルビス公爵の子息。
キリエルと同世代が多いからと、儀式に参列する年齢ではないのに連れてこられた。
つまらないオトナばかりの中で、2つ年上の彼は異色だった。
「赤い悪魔を相手にしてはいけない」
誰も彼に近づくことを許してくれなかった。
言葉を交わすまでもなく、こっそり夜の庭で会った。
再会は8年の月日が経っていたが、二人はすでに親友だった。
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