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朝市で大量のリンゴと生みたての卵を仕入れ、郊外にでると走り出した。
「走るって、どう言うこと?」
大して走らないうちにキリエルは音をあげた。
「どうして馬じゃないんだ?」
予想外の展開にキリエルは困惑を隠せない。
少し休憩することにして、ミラーはクロードの持つ滋養薬をキリエルに一口飲ませるように言った。
「クロードは馬に乗れません。馬車で行くのは目立ちすぎます」
荷車は農民の行き来にも使われるが、馬車は金持ちか長距離の旅人でなければそうそう借りない。追っ手を警戒するミランダは旅人としての形跡をなるべく残さないようにしているのだという。
「今後、走るなら俺は馬でついてく。今日は歩いて行く。後から宿に行くから何か目印をくれよ」
一息ついただけだというのにすぐに出発しようとするので大地に大の字になって駄々をこねた。
「魔術でついてこれないもんなの?」
クロードはそれを足で小突いて、起きるように促した。
キリエルは上半身を起こしい、口を尖らす。
「こんなところで地脈に触れたら厄介な魔物がわんさか出てくるよ」
キリエルはかまわないがミラーは嫌がるだろう。
「魔術って不便ですね」
クロードは力一杯侮蔑を込めて言う。
ミラーに絶対自分のものとわかるものを何かを預けるように言われ、魔術師のローブの腰紐を渡した。
それには特殊な仕込みがあって自分以外に持っていない物だ。
探索の魔術は得意ではないが、それなら自らの存在を放つ力があるから探し易い。
荷車が去って視界から消えると歩きだした。
太陽の位置をみて、地図とコンパスで町までの距離をはかって気が滅入る。
日付が変わるまでに着く気がしない。
やはりこのまま別れてしまおうか。
腰紐はまた作れば良い。
そんなことを考えながら歩くうちに昼が過ぎ、夜が更け、町に着く頃には町の入口は閉ざされていた。
合流するにしろしないにしろ、このまま次の町へはとうてい行けない。
夜明けまで待つしかなかった。
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