マンドリンを背負った魔術師には気をつけろ

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 目を覚ますと隣のベッドでクロードが眠っていた。  クロードが目を覚ますとミランダは馬車の手配を言い付けて、手配が難しい時の最後の手段として癒者ギルドの手形を渡しているのが目についた。 「ミラーの仕事は癒者ギルドのものじゃないのか?」  ふと聞いてしまう。  ミラーは答えず、湯浴みを始めた。 「竿もないんだな。作った穴の具合はどうなんだい」 「遊びではいたしませんよ」  衝立ての上から覗き込むと、ミラーは動じることなく言った。 「私には催淫の術は通用しませんからね」  骨と皮といった細さだが、濡れたミラーの白い肌と黒い毛は観賞に能う美しさで、キリエルは衝立ての上から見続ける。 「ミラーは沿海州人だろ?」  沿海州人は男女関係なく、親しくなくても楽しみで交わり、人目も憚らないと噂にきく。 「癒者に不用意に触れると気を奪われますよ」 「俺の気を飲みたくは?」 「ありません」  ミラーは淡々と身体を洗い、拭いて、湯を捨てた。  上下緑の癒者の服を着るとテーブルに着く。  テーブルに食事がたんまり用意されている。 「癒者は男でも男の気から子供を作れるんじゃないのか?」  朝御飯がまだのキリエルは向かい合う椅子を示されて座りかけた。 「なるほど、だからあなたは私に興味があるのですね」 「まぁな、俺は自分の息子が欲しいんだ」  ミラーはキリエルの下半身を透視するうように見た。 「それっぽっちの気で命など作れません」  キリエルはミラーの脇に立って、顎を上げさせて唇に唇を触れさせた。  ミラーは真っ直ぐキリエルを見つめて、何の反応もしなかった。  キリエルは肩をすくめて椅子に座ると食べ始めた。  しばしの沈黙の中、マンドリンが触れてもいないのに鳴った。  振り向かなかったが、緊張感を隠せなかった。  ミラーは気付かないフリだろう。黙々と食べ続けている。  あいつがこの街にやってきた。
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