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『それが貴方を最初に見た時の、嘘偽りない印象です。
恋愛感情では全くなく、珍しい生き物を見つけたときの気持ちと同じですね。
所有欲というのでしょうか、お父様にそれを話すと、すぐに貴方のことを調べてくれ、貴方の両親とわたしの両親が、同じ学校に通っているときがあったことも分かりました。
父と母は少し驚いていましたが、顔も全く覚えていないし、話したこともなかったと言います。
そうしてわたしたちのような人間にとっては、下々の生活を知るのも良い勉強ですし、そのためにも卑しい血筋の人間と話すのも良いだろうということで、友人としての付き合いを認めてくれたのでした』
これも祖父の話とずいぶん雰囲気が違う。祖母の両親は猛反対どころか、応援してくれたと言う。どうやら快く思っていなかったのは、祖父の両親だけだったようだ。
つまりフラれた側の人間だけが、執拗に覚えていただけで、フッた方は相手の記憶すらないのだ。そういうものなのだろう。
祖父と祖母の想いも、だいぶ食い違っている。男のほうは両想いだと思っているが、女のほうはただの友達だとしか思っていない。僕自身も経験があるので、これからどうなるかが危ぶまれた。
まるで自分の身が切り刻まれるような思いで便箋をめくる。欄外に描かれている赤い鶴も、血に染まっているようにすら感じられた。
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