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『そうして私たちは付き合い始めたわけですけれども、今から自分で振り返ってみて、つくづく滑稽なものだったと思います。
なにしろ会話がかみ合わないのです。私のほうはあなたのいわば底辺の生活が知りたかったわけですが、質問をしても肝心なところは話が曖昧になるのです。抽象的というか、ポエムというか、あれは何なのですか?
この人は頭がおかしいのではないかと、何度思ったか数えきれません。スイカみたいに叩き割って中身を見てみたいものだと思ったぐらいですが、その願いは叶いました。
貴方が私の両親の前に現れて、開口一番“僕に娘さんを下さい”と言ったことで、貴方の頭の中ではいつのまにか、私たちが結婚の約束を取り交わしたことにまでなっているのが分かったのです』
想像以上に暴走している。話が詩的になるのも昔からだったらしい。なかなかここまで思い込むことはむずかしいと思うので、僕はかえって尊敬した。
この二人の仲が進展するのは、さすがにもう不可能ではないか。なんだか手紙の中のほうが現実で、目の前にいる祖父が虚構に感じられてきたぐらいだ。そろそろ読むのがきつくなってきたなと思ったが、手紙はもう終わりに近づいている。
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