2 なれそめ

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「もちろんそんな障害なんて、むしろ恋心を燃え上がらせる薪みたいなものでしかない。    わたしは彼女の素性が分かるなり、すぐさま床を上げた。そうして彼女の住所や通っている学校を調べ上げ、愛する人に会いに行ったんだ。  もっとも両親や市蔵さんの眼が光っているから、彼女においそれと声をかけるわけにはいかない。  わたしは忍者のように身を隠して、彼女の登下校の姿や、彼女の部屋の窓から漏れる灯を目に焼き付けた。  ときには差出人すらも隠して彼女に愛の手紙を送ったり、自分の素性を偽って電話をかけて、彼女の声を聞いてすぐに切ったりしたこともある」  あきらかにストーカー行為ではないか。  わが祖父ながら大丈夫かと心配になってきたが、結果オーライということもあるし、受け取る側の解釈にもよるだろう。  それに祖母からの手紙にも、一度は結婚の約束を交わし合ったと書いてあったのだ。よほどドラマティックな出来事が起こったのだろう。自分の恋愛の参考にもなるかもしれないと期待して、身を乗り出して話を聞いた。
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