40人が本棚に入れています
本棚に追加
さすがにことを荒立てるつもりはないのか、小声になりつつ若干イントネーションが違う日本語で話しかけてくる。
しかし、犯人はそうもいかないのか、その鋭敏な聴覚を使い存在を知覚したようだ。
「誰だ!」
瞬間、リビングに向かって浴びせられる怒声。
少しずつこの部屋に近づいてくる気配。
ロマーネが緊張感を高めていく傍らで俺は徐々にソファーに身が沈んでいく。
緊張感が限界に達したとき、リビングの扉が勢いよく開け放たれ、一瞬のうちに俺の目の前へと犯人が肉薄する。
すぐさま張られる防御魔法。
「俺がいない間も修行を怠ってはいなかったようだな、シエラ」
「この防御魔法は……、ひょっとしてソウタ殿か!?」
この屋敷に居候していた犯人であろう彼女はすぐさま臨戦態勢を解き、「会いたかったですよー!」と、飛びついて来る。
「一回離せ……ッ!」
「おっと、すまない。取り乱してしまった」
「い、いいんだ。それで、なんで勝手に俺の家に住んでたんだ……?」
俺は疑いと不信感を込めた目を向ける。
向けられた本人はすまなそうに目をきょろきょろさせながら、言葉を紡いだ。
「そ、ソウタ殿が居なくなった後、私たちは一週間ほど探し回ったんだ。それでもソウタ殿は見つからずじまいで、その後もずっと探し続けてきたけど、結局手掛かりは得られなかった」
最初のコメントを投稿しよう!