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人の気配は感じない。感じないが、若干の生活感はあるため、近いうちに人の出入りがあったことは確実だろう。
「俺の家に誰かが出入りしている……?」
他人の家に許可なく入り込むことは感心できたことではない。いくら人が住んでなかったからとはいえ、その家の家主が帰ってこないとも限らない。
現に俺はこうして帰ってきた訳だから、勝手に侵入し、勝手に生活していたことを咎めなくてはならないのはむしろ当然と言えよう。
今もこの家に住んでいるのかはわからないが、ひとまず手掛かりにつながるものを探す。
「ロマーネはその先にあるリビングで何か手掛かりになりそうなものを探してくれ」
「あっ、はい!」
先ほどの呟き一つで俺の感情を酌んでくれたのか、たたたっ、という軽い足取りでリビングのほうへ向かう。
「俺も動くか」
ポツリとつぶやき、まず生活するうえで必ず使うであろう場所へ向かった。
俺の体内時計で六年たっているといっても、そこは俺の家。
迷うことなく一直線に目的の場所へ到着する。
そこはそう――キッチンだった。
キッチンには予想した通り俺の私物であった皿を利用した形跡もあり、犯人が残したであろう痕跡も残っていた。
キッチンのハンガーにかけられたそれをおもむろに手に取り、観察する。
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