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ピンク色の生地に小さく縫われた『Siela』の文字。
この家が誰に利用されていたのか大体察した俺は小さくため息をついてロマーネのもとへと戻った。
◆◇◆
「あっ、異国の人! 若干の痕跡は残ってましたよ!」
駆け寄ってくる少女を横目に、俺は手近なソファーへと身を落とす。
「その件は大体犯人が分かったからもういいよ。それと、俺の名前をまだ言ってなかったな」
「そういえばそうでしたね」
どうやらこの少女は見かけには寄らずなかなかの天然だ、と自らの置かれている状況とは裏腹に場違いな感想を抱きつつ、自己紹介する。
「俺はここに住んでた大森ソウタだ。改めてよろしく」
「その体勢でよろしくと言われましても……」
言葉だけでよろしくと伝えた俺に予想通りの反応を返してくれて若干気分が軽くなる。
「まあそうだろうが、そろそろ戻ってくるだろう犯人のことを考えるとどうにも頭が痛くてな」
気分が軽くなるといっても気休め程度で、実際のところは完全に立ち直ったわけではない。
犯人のことについてあれこれ考えているうちに、当の本人がやってきた。
「ただいまー。って、人の気配!? 誰だ……!」
扉越しでも聞こえる凛として透き通った声に、俺は頭を抱える。
「オオモリさん、誰か来ましたよ?」
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