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『フハハハ、流石は神世紀の勇者たちだ。今まで私をこれほどまでに追い詰めた勇者はほとんど居なかったぞ』
魔王はハハハと笑いながら再び立ち上がる。
その姿は隙だらけであるはずなのに、不思議な力が俺たちを動かしてくれない。
『ここまで追い詰めたのだ。褒美に我がとっておきの魔法を見せてやろうぞ……!』
魔王はそう言うと、鎖鎌をどこからともなく取り出し、無詠唱で鈍色にねっとりと光る魔力をまとわせて鎖鎌を飛ばす。
その速度はパーティ内で最もスピードに振ってある俺ですら目で追うのに一苦労であった。
そんな鎖鎌をメンバーは見切れるはずもなく、シュヴィがその鎌を喰らってしまった。
「うぐぁああ!!!」
シュヴィが瞬く間に壁まで弾き飛ばされ、壁に激突すると同時、部屋に赤黒い液体を飛翔させた。
それを目にした瞬間、俺の中でようやくここが本当の戦場であると思い知った。
今までの旅では傷つくことはあれど、死にかけるようなことはなかった。
これまで旅を共にしてきた仲間が死の淵に立たされることによって、ようやくそれを理解したのだ。
『ふ、これで彼女はしばらく動けないはずだ。次は誰にするかな?』
そんな内心を知ってか知らずか、魔王は次なる獲物を品定めするようにじろじろと一人ずつ指さしていく。
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