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あの会話から数十分が経過した後、不意にロマーネが話しかけてきた。
「あの、ソウタさんは一つのおとぎ話を知っていますか?」
ちゃっかりシエラに乗っかって変えられた呼び方も、もう注意する気も起きなかったので話の続きを促す。
「なんの?」
「『モルゾードの英雄』です」
打てば響くように返ってきたその作品名は、俺の知らないものだった。
「いや、知らない」
俺は首をひねりつつ、言葉を返す。
「話してもいいですか?」
ニコニコと話しかけられては否定もできない。
「ああ、かまわないよ」
俺は微笑みながら彼女の話を聞くことにした。
「これはお母様から聞かせてもらった話なのですが――」
ロマーネは短く前置きをして、物語を語り始めた。
◆◇◆
「――ということでした」
一通り聞き終えた俺は不自然な顔になっていたはずだ。
物語を要約すると、不自然な格好をした少年はある少女と出会い、魔王を斃すために奮闘し、時には魔王以外の化け物と戦ったり、仲間を集めて最終的には目的である魔王を斃すというものだった。
……要するに俺たちのことである。
物語を細かく見てみれば若干の違いはあれど、大まかな内容は俺たちの辿ったストーリーそのもので、その物語は俺たちのことが美化されすぎていた。
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