二度目の異世界召喚でも勇者でした

23/34
前へ
/34ページ
次へ
 あの会話から数十分が経過した後、不意にロマーネが話しかけてきた。 「あの、ソウタさんは一つのおとぎ話を知っていますか?」  ちゃっかりシエラに乗っかって変えられた呼び方も、もう注意する気も起きなかったので話の続きを促す。 「なんの?」 「『モルゾードの英雄』です」  打てば響くように返ってきたその作品名は、俺の知らないものだった。 「いや、知らない」  俺は首をひねりつつ、言葉を返す。 「話してもいいですか?」  ニコニコと話しかけられては否定もできない。 「ああ、かまわないよ」 俺は微笑みながら彼女の話を聞くことにした。 「これはお母様から聞かせてもらった話なのですが――」 ロマーネは短く前置きをして、物語を語り始めた。 ◆◇◆ 「――ということでした」  一通り聞き終えた俺は不自然な顔になっていたはずだ。  物語を要約すると、不自然な格好をした少年はある少女と出会い、魔王を斃すために奮闘し、時には魔王以外の化け物と戦ったり、仲間を集めて最終的には目的である魔王を斃すというものだった。  ……要するに俺たちのことである。  物語を細かく見てみれば若干の違いはあれど、大まかな内容は俺たちの辿ったストーリーそのもので、その物語は俺たちのことが美化されすぎていた。     
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加